【異物】クレームの毛髪が工場で混入していないことを証明する方法

異物

おはようございます!シータケ@食品工場です。

先日は「毛髪混入防止対策の基本」や、「ということで記事を書かせていただきましたが、散々対策を打ったとしても毛髪混入クレームがゼロになることはありません。

それはなぜか?

理由は「お客様が自分の手元で混入させた毛髪を、工場で混入したと勘違いするケースがある」からです。

この場合、科学的なデータをもとに工場で混入していないことを証明し、お客様にご説明してご納得いかなければなりません。

全て工場のせいだと受け止めていは日々しっかりと対策を実施して頑張って働いている従業員も報われません。

では、工場で混入していないことを証明するためには、どのような手段はあるのでしょうか?

本日その一つ手法として、カタラーゼ試験ご紹介していきたいと思います

この記事を読めば、実際に「毛髪」が混入したときのファーストアクションについて学ぶことができますので、最後までご覧いただければ幸いです。

カタラーゼ試験とは何か

カタラーゼ試験はとても簡単で、お客様から戻ってきた毛髪の毛根を「過酸化水素水」に浸すだけです。

毛根が生きていれば「泡」が出ます

毛根が死んでいれば「泡」は出ません

工場で製品を作る際に「加熱」の工程がある場合、仮に毛髪が混入したとしても熱で毛根の細胞が死ぬため「泡」がでることは無いのです。

即ち、お客様から届いた毛髪の毛根を過酸化水素水に浸して「泡」が発生するのであれば、それは工場の製造工程ではなく、お客様が使用する過程で毛髪が混入したことを示す証拠となるわけです。

この手法で判断するのにいくつか注意点があるので解説していきます。

注意点

注意点①工場の製造工程に加熱工程があるか

工場の製造工程に加熱工程が無いと、毛根の細胞が死なずにお客様の手元に届く可能性があるので、上述したロジックが成立しなくなります。たとえばお惣菜の工場だったり、レストランでは毛髪はそのままお客様の手元に届きますので、この手法は使えません。

注意点➁毛髪に毛根が存在しているか

お客様からご返送いただいた毛髪に毛根が存在していないとこの試験は実施できません。毛髪は毛根の部分で盛んに細胞分裂が起きて、死んだ細胞が押し出される形で髪の毛が伸びていきます。つまり、髪の毛の毛根以外の部分は細胞が死んでいるので、カタラーゼの反応の対象ではないということです。

髪の毛が切れて混入したようなケースではこの分析方法で断定できないので、注意が必要です。

注意点③断定的な表現を避ける

この手法において「工場で混入していない」ことを証明することはできますが、「誰の毛髪」が「どこで」混入したのか特定することはできません。クレーム報告書に記載するときも「以上の試験の結果より、工場の製造ラインで毛髪が混入した可能性は低いと推察いたします」という表現に留めておきましょう。

カタラーゼ試験の手順

ではさっそくですが、この反応について、順を追って説明していきたいと思います。

そもそも過酸化水素とカタラーゼとは?

「過酸化水素」はあらゆる生物の呼吸や代謝の過程で生じる物質ですが、そのまま存在していると細胞自身にダメージを与えるため、あらゆる生物はこの過酸化水素を分解する酵素を持っています。

この過酸化水素を分解する酵素は「カタラーゼ(過酸化水素分解酵素)」と呼ばれているわけです。

カタラーゼは過酸化水素を以下の化学反応を促進することで、無害な水と酸素へ分解します。

この反応において、結果的に出てくる「酸素」は気体であるため、ブクブクと泡になって現れますので、視覚的に反応が進んでいることを確認できます。

重要なことは…

細胞が生きていれば必ずカタラーゼを持っている
→毛根が生きていれば必ずカタラーゼを持っている
→毛根が生きていれば、カタラーゼが過酸化水素を分解して、水と酸素が生じる
毛根が生きていれば、酸素が生じるのでガスが発生する

ということになります。

では、次に実際にカタラーゼ試験を進めるための手順を見ていきましょう。

手順①クレームの毛髪を入手する

毛髪混入のご指摘があった場合、お客様や担当営業から連絡があると思います。この場合、毛髪を保管していただき、すぐに送ってもらうように指示しましょう。チルドで送るなど不要ですので、常温でそのまま送ってもらうようにしましょう。あまり古いと細胞が死んでしまうので、できるだけ早く送ってもらうことがポイントです。

手順➁3%過酸化水素水を作る

殺菌薬であるオキシドールが使用できますので、購入しましょう。参考までに以下の商品を紹介しておきます。ちょうど3%程度なので、そのまま使用することができます。


手順③毛髪を3%過酸化水素水に浸す

クレーム品として返却された毛髪を上記の3%過酸化水素水に浸しましょう。もし食品などが付着していた場合は水で洗い流して毛髪だけの状態にしましょう。異物の保管やこのようなテストにシャーレを使用すると紛失もせず、反応の様子もきれいに撮影できるので良いと思います。


手順④顕微鏡で観察して写真を撮る

肉眼では泡が出ていることは確認できませんので、顕微鏡で観察しましょう。顕微鏡で写真を撮ることが出来ればそのままお客様に報告書を作成する際に直接的な証拠とすることができます。

以下の写真は一例です。(消費科学研究所のサイトより)

顕微鏡が無い場合は以下のリーズナブルな顕微鏡でも対応が出来ますのでご検討ください。

WifiでスマホやPCに接続してスクリーンショットで写真も撮れますので、これで必要十分です。


まとめ

いかがだったでしょうか。

毛髪混入は「申し訳ありませんでした」と簡単に済ませがちですが、科学的なアプローチで工場で入ったのか、お客様で入ったのか、確認することもできます。

今回の手法は比較的リーズナブルな価格のアイテムでお手軽に検証することができます。

客観的なデータをもとに事実を伝えていくことはお互いにとって大切なことなので、皆様もぜひぜひ参考にしていただければ幸いです。

今日は以上です。

さようなら!!!

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