【トラブル】原料から虫が出てきた

工場生活

おはようございます!!シータケ@食品工場です。

「虫」ってなんで食品から出てくるのか理解できませんよね?
そう、私も工場へ配属されるまではよくわかっていませんでした。
この記事を読めば、その一例について知ることができると思います…!

さて、ではさっそく、先日起きたトラブルの紹介です。トラブルは何の前触れもなく起きます。そう、いきなり電話がかかってくるんです。

この日は原料秤量室の管理者の女性からの電話でした。

「あっ!もしもし~、シータケさん?あのねー、なんか原料から虫が出てきたのよ。どうしたらいいかな、ちょっと来てくれない?」

「虫ですね!今行くので、その原料の秤量はストップしてください」

このようにしてトラブルの対処が始まります。

初動

電話でもすぐに伝えていますが、その原料の秤量をストップします。

現場の皆様は当日のノルマがあるので、急いでいます。製造優先なマインドになりがちなので、リスクをお伝えして我慢していただく必要があります。

これを怠ると被害が必要以上に拡大したり、原因がよくわからなくなってしまうことがあります。

特に未開封での異物発見の場合はサプライヤー(原料メーカー)責任であることを証明出来ますので、状況証拠として写真を撮る必要があります。

何が起きたか(現状把握)

現場に到着すると、製造管理者の女性と従業員の女性が説明してくれました。

・うま味調味料(白い粉)を箱から出して開封しようと思ったら、黒い点が見えた
・よくよく見ると虫のように見えたから連絡した
・原料は未開封の状態である(原料メーカーで混入している)

「ふむふむ、なーんだ、じゃあその原料はサプライヤー(原料メーカー)に返品して、解決じゃん。」って普通の方はそう考えて試合終了ですが、確認すべきことがまだまだあります。

ここから多発性の確認をしていきます。

そうです、同じロット(同じラインで同じ日に製造された製品)が納入されているか確認して、その原料を使用していいのか判断しなければならないのです。

最悪の場合は、同じロットに大量に虫が混入している可能性もありますよね?その可能性の有無をこれから判断していきます。

多発性の確認

そもそも同じロットの原料があるか確認した

基本的に同じロットをパレットに乗せてまとめて仕入れますので、同じロットがたくさんあることが多いです。

実際に確認してみるとまだ同じロットの在庫がたくさんあるうえに、半分は使っていることがわかりました。

虫を顕微鏡で見てみた

虫を顕微鏡で見てみるといろいろなことがわかり、多発している可能性は低いと推察されました。

①この虫はクモ類の成体(大人)であること
→クモは屋外から単独で侵入してくることが多い。成体であることから、大量に混入しているとは考えにくい。(幼体の場合は生まれたてで大量にいる可能性もある)

➁完全体であること
→足などがない場合、失われた部分がどこにいったかわからないので探す必要がある。

↑イメージ写真。詳しくはイカリ消毒のサイトを参照。

同ロット原料の使用実績を確認してみた

すでに使用していた同ロットの原料は使用したあとに製造ラインのろ過機を通しているので、ろ過機に今回のクモや虫類の捕集がないことを確認できました。これも多発していないことを判断材料の一つとなりました。

なお、私の工場は具が無い液体の食品を製造しておりますので、何かが混入すればろ過機に捕集されることになります。

ろ過機はこのようなもので、配管の途中に入れて異物の捕集、およびモニタリングを行うものです。

サプライヤー(原料メーカー)に問い合わせをした

サプライヤー(原料メーカー)に問い合わせて、先方の製造ラインには同様にろ過工程があることから、充填機で1袋だけ偶発的にクモが入り込んでしまった可能性が高いとの見解をもらい、多発性が低いことの確認を得ました。

秤量を再開する

以上の調査結果を以って、「1袋だけたまたまクモが入ってしまった可能性が高い」と推察されたため、以下のように判断しました。

①虫が入っていた原料は原料メーカーへ返す(返品処理)

➁同じロットの原料は使う(虫が入っている可能性が低いため)

③念のため1袋は念のため検査台で検品してみる

④製造に使った後に製造工程のろ過器に虫が捕まっていないことを確認していく
(後日確認して虫がいないことが確認できました、よかった…!)

秤量を再開する際には状況を知っている原料秤量室の従業員を全員集めて、上記の判断に至った経緯を説明をしました。

納得がいかない方がいれば、その場で意見をもらうようにしていますが、みなさんご納得いただけたようです。

食品を製造しているので、現場の全員の納得感が大切なのです。

このことをいい加減にするとSNSで晒されるリスクがありますし、全員が納得感のある対処をすることが大切です。

原料メーカーにフィードバック

クレームとして連絡し、原因と対策の報告書を作成してもらいました。

再発防止をどのように実施するのか、原料メーカーを詰めるのも仕事の一つです。

なお、食品メーカーは一般の消費者の方々に商品を提供している会社に目が行きがちですが、その裏にはB to Bで商品を提供している業務用の食品メーカーが多数存在しています。

原料に異物が入っていたために、最終商品に異物が混入してしまう事例も多くあるのです。

大切なことは…

今回の件もそうですが、大切なのはトラブルが起きた時に

「自分が自信をもって食べれるか、家族に食べさせることが出来るか

という目線を大切にしています。

私たちが作っているのは食品で、疑わしきは商品価値無しです。

ただ、一方で利益を追い求める企業でもありますので、少し不安があったら全て廃棄するわけにもいきません。

事実を整理して理論的に対処していく姿勢も求められるのです。

そこが食品工場の難しさでもあり、面白さでもあると思います。

昔はいつトラブルが起きるかドキドキ臆病になっていましたが、最近は「みんなが困っているトラブルを解決してやろう、いつでもきやがれ」と前向きな気持ちで待ち構えています。

本日は以上です。

バイバーイ(^▽^)/

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