おはようございます!シータケ@食品工場です。
今日は「防虫の基本的な対策について」ということで、表題の件について解説していきます。
虫の混入といえば、最近だとセブンイレブンのおにぎりにゴキブリが混入していたり、少し前だとペヤングにゴキブリが混入してたのも記憶に新しいのかなと思います。
「虫の混入、特にゴキブリやハエなどの衛生害虫の混入は一撃で会社の存続に影響を及ぼします」
今回の記事を最後までご覧いただければ、虫を混入させないために、工場や飲食店においてどのような管理をすべきなのか、その概要を理解することができます。
工場の従業員の皆様はもちろん、飲食店などを経営している方も参考になる内容だと思いますので、ぜひ最後までご一読いただければ幸いです。
はじめに
防虫対策は非常に難しく、多くの食品製造工場が施策を取り入れているものの、昆虫類の混入事故は減少していないことが知られています。
防虫対策で効果を出すことは難しく、防虫対策を困難にさせている理由として、以下の点が挙げられます。
①昆虫類は短期間で繁殖が可能
➁対処療法である殺虫・捕獲は一過性の対応にしかならない
③昆虫類は移動能力が高く、特定の場所に止まらない
④建築物の構造などに原因があることもあり、根本対策が打ちにくい
したがって、昆虫類の生態をよく理解したうえで、虫の侵入や発生を防ぐためにあらゆる手段を用いた総合的な防虫管理システム(IPMという)の導入を工場全体で進めていくことが必要と言われています。
色々と難しいことを書きましたが、防虫対策の基本はPDCAサイクルを回すことです。
①PLAN :加工場のどこに虫が存在しているかモニタリングする計画をたてる
➁DO :モニタリングの計画を実行する。
③CHECK :どこでどんな虫が捕まっているのかを確認して評価する。
④ACTION :問題となっている箇所の改善を実施する
→①のPLANに戻り、改善した結果効果があったのかを評価する
では、実際に工場における防虫の仕組みの一例を見ていきたいと思います。
この防虫の仕組みにはプロの「防虫業者」に依頼をして実施していただくことが多いです。防虫業者にはイカリ消毒株式会社や、アース環境サービス株式会社などが代表例として挙げられます。
①PLAN 捕虫器をしかけてモニタリングの計画をたてる
加工場、通路、事務所、倉庫など様々なところに「捕虫器」とよばれるトラップを設置し、虫が存在しているのかモニタリングをしていきます。モニタリングは主に2種類のトラップを用いて実施します。
一つ目は歩行性昆虫、二つ目は飛翔性昆虫のモニタリングです。それぞれ確認していきます。
歩行性昆虫のモニタリング
たとえば、ゴキブリやクモなど床を歩くような虫に関しては以下のようなトラップを設置します。
ゴキブリのモニタリング効果を高めたい場合はフェロモンの誘引剤を設置するとより効果的で、ゴキブリがいた場合は集まってきてトラップの粘着成分にくっついて捕獲されます。
飛翔性昆虫のモニタリング
参考まで、ハエなどの飛翔虫は以下のようなトラップで捕獲して調査します。中央のランプに誘引されてきた羽があって飛ぶような虫(ハエなど)を緑色の粘着シートで捕獲します。
よりリーズナブルな価格帯のもので、以下のようなものが市販されています。捕虫用の蛍光灯に誘引されてきた飛翔性昆虫が、周りの粘着シートに張り付く仕組みです。
粘着シートは状態にもよりますが、一週間モニタリングしたら捨てて新しい物に交換するのでいくつかストックしておきましょう
➁DO モニタリングの計画を実行する
続いてPDCAのDOで、実際に計画通り虫がどこでどれぐらい捕まっているか確認をしていきます。
確認の仕方ですが、以下がわかるようになっていれば、書式は何でも大丈夫です。
1.設置日(いつモニタリングを開始したトラップなのか)
2.点検日(いつ確認したのか)
3.虫の種類(点検日にどんな虫が捕まっていたのか)
4.虫の数(点検日に3で捕まっていた虫が何匹いたのか)
これを毎日確認して虫の増殖や侵入の推移を確認していきます。
③CHECK どこでどんな虫が捕まっているのかを確認して評価する。
捕虫器に虫が捕まっていない場合
虫が捕まっていない場合は、よく虫の侵入を防ぐことが出来ていると判断して、引き続きモニタリングを継続します。
捕虫器に虫が捕まっていた場合
捕虫器に虫が捕まっていた場合、虫の種類と捕獲量を評価して「対応の必要性」を評価します。対応が必要だと判断した場合、「原因」を究明して「対策」を講じます。
この原因究明は委託先の業者と協力して実施しますが、以下の情報から原因を推察していきます。
・捕まっている虫の種類
・どこのトラップに捕まっているか
・何匹捕まっているか
特に「何の虫が捕まっているか」は重要な情報で、虫を顕微鏡で見て種類を同定することが最初のステップとして重要になります。原因を推察する場合には、「内部発生なのか」「外部侵入なのか」がキーポイントになります。これらはだいたい上述した虫の種類や捕獲されている場所を確認すれば予想がつきます。
④ACTION 問題となっている箇所の改善を実施する
改善については具体的な虫の種類とシチュエーションがあったほうがわかりやすいと思いますので、実例を交えて説明していきます。
(イカリ消毒の工場害虫名鑑より)
例①シバンムシが捕まっていた場合
内部発生であることが多いです。加工場のどこかに粉溜まりがないかを確認します。粉だまりがあった場合は掃除を実施し、応急処置として発生しているシバンムシは燻煙で殺虫する必要があります。
また、恒久対策としては粉が蓄積しないように定期的な清掃の頻度を決める、シバンムシが侵入しないように目張りする、などが一例として挙げられます。
燻煙には以下を使いましょう。私も使ってシバンムシを殺したことがあり、その効果は間違いないです。
燻煙で殺虫した後、たしかに殺し切れているのかどうかを確認する必要があります。その際に、モニタリングには以下のトラップを使用しましょう。シバンムシ専用のトラップでフェロモンが入っていますので、万が一殺し切れていない場合はシバンムシの存在を確認することができます。
例➁チャタテムシが捕まっていた場合
内部発生であることが多いです。チャタテムシはカビを食べて成長するので、どこかカビが発生している場所を見つけてどこで増殖しているのか確認しましょう。
同様にアースレッドで殺菌出来ますが、隙間に入り込んでいることが多く殺し切れない可能性があります。
根本対策としてカビが発生している隙間という隙間を綺麗に清掃しましょう。殺す場合は以下のようなスプレーも有効です。
チャタテムシはアブラムシと同じように単為生殖します。つまり一匹でも増殖が可能ということです。徹底的に殺さなければすぐ増殖してくるので、注意が必要です。
湿度がこもりやすいとカビが発生してチャタテムシも増えやすいです。除湿器を入れるなど湿度コントロールも視野にいれて対策をとるようにしてください。
③ユスリカが捕まっていた場合
外部侵入であることが多いです。どこか部屋に外とつながってしまっている隙間はありませんか?
また、隙間から光が漏れているような場合は、その光に対して誘引されている可能性が高いです
外から建物を見た時に光がもれいているような場所があれば、目張りしてしまうのも手段の一つです。
ユスリカは外で蚊柱を作っている代表的な虫で、河川敷で自転車をこいでいると口や目に入ってくる虫です。
近くでユスリカが発生している排水溝などがある場合は薬剤で殺虫しましょう。
このようにして原因を類推し、対策を講じて記録に残します。
たとえば、食品安全の認証であるFSSC22000の監査ではこの一連の流れに抜け漏れがないか、仕組みとして機能しているかを評価されることになりますので、しっかりと一連の流れを記録に残すようにしましょう。
特例:ゴキブリが加工場で見つかった場合
ゴキブリが加工場で見つかった場合は一匹でも大トラブルです。
ゴキブリは衛生害虫で、混入した場合、一撃で会社の存続にかかわる事故を引き起こしますので、以下のような段取りで確認を進めていきます。
初動
製造ラインをストップします。ゴキブリが捕獲されるまではラインを動かすことはできません。
ゴキブリを捕獲したのち、ゴキブリが侵入できそうな開口部(タンクの内側、充填口など)において全て確認を実施し、問題がないことを確認します。
また、加工場でゴキブリが見つかった場合は殺虫剤は使用しないように注意してください。食品に混入する可能性があります。
捕獲されたうえで、開口部に問題がなければ製造を再開します。
原因追及
次に捕獲したゴキブリを確認して原因を追究していきます。まず、一言にゴキブリといっても種類がたくさんあります。
またイカリ消毒さんのサイトを参考に見ていきます。
チャバネゴキブリの場合
チャバネゴキブリは食品の残渣などを食べて内部発生している可能性もあります。特に卵からふ化したての若齢幼虫が見つかった場合は多発している可能性もあり、加工場の中でどこで発生しているのか念入りに調査を進める必要があります。
クロゴキブリの場合
成虫が単体で見つかった場合は比較的外部から侵入するケースが多いです。メスが見つかった場合は卵を加工場に産み付けている可能性もあるので、注意が必要になります。どこかゴキブリが侵入するような隙間がないか。荷物を搬入するときに付着して入ってきている可能性がないかなど、調査が必要です。
モリチャバネゴキブリの場合
モリチャバネゴキブリは屋外の枯れ葉の下で暮らしているゴキブリで、屋内で増殖することは極めてまれだと言われています。このゴキブリが見つかった場合は外部侵入である可能性が極めて高いので、外部から侵入するような隙間がないか、荷物にくっついてきていないかなど確認して対応していく必要があります。
対策→モニタリングを継続
それぞれの虫の種類や捕獲状況から原因を推測し、対策をとります。
内部発生であれば発生個所を清掃し、衛生的にたもつ。
外部侵入であればルートを特定して清掃したりエアーを吹き付けて吹き飛ばしたりして加工場に入る前に対策がうてるようにします。
対策を講じたあとは、モニタリングを継続して対策が有効だったのかを評価していきます。
(有効でなければゴキブリがふたたび捕まる)
フェロモンがついているトラップが有効なので、幅広く設定してモニタリングしましょう。
まとめ
お客さまからすればゴキブリの種類は重要でなく、とにかく入っていたら一発OUTです。
現場で見つかることはめったにありませんが、見つかった場合は大トラブルとして上記のような対応をとります。
絶対に製品に混入させないように、上記したPDCAをしっかりと回して防虫対策を徹底していきましょう!!
本日は以上です!
さようなら!
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