おはようございます!シータケ@食品工場です。
今日は「毛混入止対策の基本」ということで解説していきます。
毛髪混入対策は、「対策の設定×従業員の教育」がセットで大切で、徹底して「混入させない」ことに注力する必要があります。
なぜならば、毛髪はどうしても「人」から発生するもので、食品と同じ「タンパク質」で構成されていますので、「金属探知機」や「軟X線検査機」などの検査機で除去することができないからです。
では徹底的に混入させない手段とはどんなものがあるのでしょうか。
この記事を読めば、今まで何となく考えていた「毛髪混入」がより科学的に考えられるようになり、その対策についても多くの手段を学ぶことができます。
はじめに
みなさん少なからず食品に毛髪が混入していたことの経験ってありますよね?
スーパーで購入したお惣菜、レストランで食事したとき、家庭で料理をしたとき、色々あると思いますが、いずれもいい気持ちはしなかったと思います。
しかもどこの誰の毛髪かわからないときは非常に不快感があり、お客様からのご指摘につながることも多々あると思います。
毛髪混入はお客様から「不衛生」なイメージにつながり、次はここの店で食事をするのはやめよう、と思いますよね。
場合によってはSNSなどで拡散され、経営に関わることになります。
今回は、そんな毛髪混入対策について解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
このブログでは食品メーカーの商品開発や工場の最前線で品質管理を手掛けてきた私が、食品工場でのノウハウについて解説していきます。 もし参考になった方がいれば、登録をよろしくお願いします。
では、まずは対策をお話しする前に、前提となる「毛髪の基礎知識」について理解することから始めていきましょう。
毛髪の基礎知識
毛髪は成長して5年前後で抜け落ちる運命
みなさん毛髪って必ず抜けるものだってご存じですか?
毛髪や体毛はずっと伸び続けるのではなく、成長しては抜け、成長しては抜けを繰り返すものなのです。毛髪は約0.3mm/日、約1cm/月、約15cm/年、と言われていて、5年前後は伸び続けることができます。
1本の毛髪が成長して抜け落ちるまでの周期を「ヘアサイクル」といい、以下の3ステージに分類することができます。
・成長期:5年前後、伸び続ける
・退行期:2~3週間、成長が止まる
・休止期:数か月、新たに成長を始めた毛髪によって古い毛髪が抜け落ちる
「KAOのサイトより」
一日に毛髪は50~100本も抜ける
日本人の髪の毛は平均で約10万本もあります。ヘアサイクルから計算すると一日に毛髪は50~100本も抜けることになります。
仮に100本一日に髪の毛が抜けると仮定すると、「4本/一時間」のペースで毛髪が抜け落ちていることになります。
一日の就労時間が8時間だとすると、一日業務している最中に32本もの髪の毛が落ちる計算です。
年間200日の勤務と過程すると、一人当たり「6,400本/年」もの毛髪が就労時間中に脱落している計算になります。
従業員が100人いた場合、「640,000本/年」もの毛髪が就労時間中に脱落していることになります。
これは大変なことで、これだけの数の毛髪が脱落してリスクが増え続けていると考えることができます。
この一人当たり「6,400本/年」をいかにして減らし、食品の製品に混入を防ぐかというのが戦略として必要になってくるわけです。
では、次に毛髪が製品に混入するパターンについて理解していきましょう。
毛髪が製品に混入する流れ
毛髪が製品に混入するパターンは以下の4パターンに分類することができます。
頭から脱落した毛髪が直接混入する
食品を製造している従業員の毛髪や体毛が脱落し、そのまま製品に混入してしまう。特に原料を投入したり、計量したり、盛り付けしたり、直接食品と接している従業員が対象になります。
衣類に付着した毛髪が脱落して混入する
帽子をかぶっていても衣類に付着していた場合、同様の現象が起きます。上着やズボンに毛髪が付着していないか。製品を覗き込んだ時に帽子に付着していた毛髪が落下しないか、など注意する必要があります。
脱落した毛髪が舞い上がって混入する
掃除が行き届いていないと、落下した毛髪や体毛が加工場に蓄積していきます。加工場ではエアコンの送風や設備の廃棄などで空気が循環することもあり、この場合毛髪が舞い上がってしまうリスクが増します。毛髪は脱落させないだけでなく、蓄積させないことも大切になります。
脱落した毛髪が静電気で資材に吸着して混入する
髪の毛は静電気に引き寄せられる性質を持っており、製品を充填する資材などが帯電していた場合毛髪やほこりは吸い寄せられて吸着する性質があります。特にフィルムなどがロールで納品されて成型しているような工場の場合、資材は静電気が発生しやすくなりますので注意が必要です。
では、毛髪混入を防ぐ対策についてご説明していきます。
毛髪混入の対策
毛髪混入対策は以下の4点が大切です。
①持ち込まない
➁落とさない
③留めない
④取り除く
従業員の一日の流れに沿って説明していきます。
前提
作業着について(①毛髪を持ち込まない)
作業着は毛髪落下防止に有効な作業着、帽子を選びましょう。静電気などが発生しにくい仕様のものを選ぶことを推奨します。一例にはなりますが、以下の商品のように帽子、上着、にインナーが設置されていて構造上毛髪が外へ落ちないものを選んでください。
また、ズボンも裾がすぼまっており、裾からの体毛の落下が落ちないような仕組みのものがベストです。
出社時
作業着と私服を接触させない(①毛髪を持ち込まない)
私服は毛髪がついていることが多いです。私服に毛髪をつけないようにしろ、というのは出社前に仕事をしろと言っているのと同じ意味なので、そこまで強要はできません。更衣の時間は厚生労働省から業務時間に含む、と指針が出ていますので、既に業務内として勤怠管理している工場が多いはずです。更衣時には私服を先にロッカーに収納し、作業着は後から持ってきて私服と接触させないようにルールを作って教育しましょう。
作業着を正しく着用する(➁毛髪を落下させない)
毛髪は上から脱落して下に落ちていきますので、上から順番に着用していきましょう。帽子を着用したあとに上着、ズボンの順番になります。帽子の裾は上着の中に、上着のインナーはズボンの中に、腕まくりなどもしないようにルールを作成して教育が必要です。
加工場に入る前
粘着ローラーをかける(①毛髪を持ち込まない)
更衣したあとには全身をくまなく粘着ローラーがけして、毛髪やほこりなどの異物を取り除きます。毛髪は上から下に落下しますので、上から順番にかけていくのがポイントです。人間は怠けるように出来ている生き物ですので、タイマーで時間を設定し、その時間粘着ローラーをかけないと先に進めないような仕組みを作りましょう。全身が見える鏡を設置することも重要です。
粘着ローラーはフックにかけておくことが多いので、以下のように穴が開いているものをお勧めします。
鏡を設定して全身が見えるようにしますが、鏡が割れると大変なので、割れないようなタイプを設置するようにしましょう。
エアーシャワーを通る(①毛髪を持ち込まない)
加工場に入る前にエアーシャワーと通り、粘着ローラーで除去しきれなかった毛髪を取り除くようにしましょう。エアーシャワーで宙に舞った毛髪が再度体につかないように、フィルターや粘着マットの設置、扉が開くまでの時間を調整しましょう。
除電設備も設置しておく(①毛髪を持ち込まない)
粘着ローラーやエアーシャワーの効果を高めるための除電設備を設置しましょう。たとえば、除電マット、除電暖簾、イオナイザーなどがあります。
従業員が靴を履き替える場所などにはこちらの除電人工芝を設置しましょう。
エアーシャワーの前にはイオナイザーを設置して除電し、風力で毛髪が落下しやすいようにしましょう。
目視で相互点検する(①毛髪を持ち込まない)
加工場に入る前に朝礼などがあると思いますが、従業員同士で相互点検して身だしなみに問題が無いか、毛髪が付着していないか、帽子から髪の毛がはみ出していないか、相互点検しましょう。
加工場で製造中
帽子に手を触れないようにしましょう(➁毛髪を落下させない)
帽子に手を触れるとせっかく正しく着用したところがずれて毛髪がはみ出る原因になります。かゆくなることもありますが触れないようにしましょう。もし触れた場合はずれてないか確認するようにしましょう。
食品が入っている容器を床に置かない(➁毛髪を落下させない)
食品が入っている容器や原料を直接床に置くと、ミキサーなどに投入するときに容器についた異物や毛髪が落下して混入します。絶対に直接床に置かないようにしましょう。食品工場では一般的なルールだと思いますが、飲食店などは日常的に床に置いているところもあり、注意が必要です。
床にどうしても物を置く場合は、以下のようなステンレスの台を購入して特定の場所に設置しておくようにしましょう。
定期的に身だしなみを確認する(➁毛髪を落下させない)
従業員の皆様が定期的に身だしなみがずれて髪の毛が露出していないか確認する時間を儲けましょう。1時間ごとのチェックリストに入れるなどが忘れないような仕組みとして有効です。
開口部を覗き込まないようにする(➁毛髪を落下させない)
作業上で食品を仕込んだり、保存している場所を人が覗き込まないようにルール化しましょう。また、そのような作業が発生しないように環境や設備を整えておくことも必要です。
ろ過機(ストレーナー)を設置しよう(④毛髪を取り除く)
具が入っていない液状の製品であれば、ろ過機を設置しましょう。仮に毛髪が混入しても捕集することができます。ただし、注意が必要なのは「入っても取り除けばいい」というわけではありません。衛生的に製造が出来ていることを確認するためのろ過機であり、定期的に何も捕集が無いことを確認しましょう。大量に毛髪や異物が捕集されていた場合、製品の処置も廃棄すべきか考える必要が出てきます。
以下の記事でストレーナーについてはご紹介していますが、飲食店などの場合、以下のようなシノワを使うだけでもいいと思います。パンチングで金網じゃないので欠損して針金が発生するリスクも低いです。
ピロー包装機にはイオナイザーを設置しよう(④毛髪を取り除く)
フィルムが帯電して毛髪が吸い寄せられるリスクがあるため、ピロー成型しているような設備にはイオナイザーを設置しましょう。
ピロー成型機について(キーエンス サイトより)
製造終了後
掃除をしましょう(③毛髪を留めない)
製造が終了したら環境をリセットしましょう。毎日清掃して、万が一床に毛髪が落ちていたとしても貯めないような仕組みづくりが必要です。
作業着は毎回クリーニングに出す(毛髪を④取り除く)
一見、きれいに見えても一度使用した作業着にはホコリや毛髪などが付着していて、二回目に使用する場合は衛生的にも異物的にもリスクが増した状態になります。しっかりとクリーニングしてリセットするようにしましょう。ルール化して従業員に周知し、徹底させることが必要になります。
継続できるように啓蒙しよう
上述した通り対策を講じてルールを設定することが必要ですが、これを守って実施してもらうのは従業員の皆様です。
設定したルールが正しく運用できていなかったり、掃除を真面目にやってもらえるかどうかは従業員の意識次第になります。
定期的に啓蒙することでマインドアップしていく必要があります。
勉強会を開く
上述したような毛髪に関する知識や、毛髪を混入させない仕組みについて従業員に説明する場を儲けましょう。会議室に集めて時間を設けてもいいですし、時間が無い場合はモニターに移してなんとなく目に入る時間を設けるのもいいかもしれません。
毛髪の捕集量をPRする
普段実施している作業が効果的なのか、モニタリングしてマインドアップすることも有効です。エアーシャワーで捕集されている毛髪の数や、ロッカーに落ちている毛髪の数など、数値をモニタリングして掲示することで見えにくい毛髪のリスクについて理解していただけるような仕組みを作りましょう。
クレームを共有する
実際に毛髪が混入したクレームが来た場合は、工場全体にPRして共有しましょう。自分達の対策が不十分だったことを理解してもらう必要があります。また、どの職場のどのラインで発生したのか特定し、その職場については追加で対策を講じていく必要があります。
この時に、人を責めないように注意しましょう。「人を責めずに仕組みを責める」が大切ですよね。
このようなマインドアップには以下のようなモニターを使用してもいいかもしれません。
まとめ
いかがだったでしょうか。
毛髪混入は「髪の毛から抜けて落ちたんでしょ」と簡単に済ませがちですが、科学的に考えると色々な要因と対策が見えてきます。
参考となる商品もいくつか添付してありますので、ぜひぜひ参考にしてみてくださいね。
今日は以上です。
さようなら!!!
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