【分析・評価】糖度(Brix)とは何か

分析・評価

おはようございます!シータケ@食品工場です。

食品工場で商品を製造する上で、「糖度(Brix)」は非常に重要な管理値であることが多いです。

食品の製造をする上で商品の品質は一定に保つ必要がありますが、農畜産物はご存じの通り個体差が大きいです。

個体差が大きいものを仕入れて、一定の品質に調整して製造し、出荷するための一つの指標(管理値)として利用されているということです。

たとえば、以下のような例が挙げられます。

・果汁やエキスなどを濃縮する際の指標
・逆に、濃縮物を加水して薄める際の指標
・農畜産物の品質を確認するための指標
・原料が正しい重量で配合されていることを確認する指標、等

製品の品質を何かしらの分析で保証する必要があるなかで、「糖度(Brix)」の分析は一般的であり、簡易的な分析機器も市販されていることから様々な企業が利用していています。

この記事を読めば以下の2点を理解することができます。

①糖度(Brix)を測定する仕組み
➁「糖度」と「Brix」は何が違うのか
③糖度(Brix)の分析の方法

では早速ですが、説明していきます。

①糖度(Brix)を測定する仕組み

そもそも糖度(Brix)を測定したことはあるものの、どんなメカニズムで測定されているのか知らない方もいるのではないでしょうか。まずはその測定のメカニズムについて触れていきたいと思います。ちなみに「Brix」という言葉は1897年にアドルフブリックスという科学者がこの測定方法を提唱したことで命名されているため、このような名称をしています。

ズバリ、糖度(Brix)は「分析対象の液体の光の屈折率を利用して数値化したもの」ということになります。

糖度計(Brixメーター)は色々なタイプがありますが、いずれもサンプルに光をあてて、その光がどれだけ曲がるかを測定している仕組みになります。

水に砂糖がたくさん溶ければ溶けるほど光が屈折しやすくなるので、この仕組みを利用しているということなんです。

糖度測定の原理と画像は「株式会社エー・アンド・デイ」のホームぺージ(サイト
「アタゴ」のホームページ(サイト)より参照しています

➁「糖度」と「Brix」は何が違うのか

「Brix」も「糖度」も基本的には同じ意味なので、あまり区別しなくても大丈夫です。Brixメーターで測定した数値は「スクロース(ショ糖)」の濃度に換算して数値化されています。そのため「糖度」ともよばれるわけです。

ただし、あくまで光の屈折率を分析して数値化しているわけで、光の屈折率を変えるのは「スクロース(ショ糖)」だけではありません。

それ以外の糖類や、アミノ酸、エキス、など水に溶けるものはなんでも屈折率を変える力があります。このようなほかの成分の場合は必ずしもBrixの数値そのものが特定の成分の濃度の数値を示すわけではないので注意が必要です。

たとえばラーメンのスープを製造していて、豚骨や鶏ガラなどからエキス分を煮だしていた場合を想定してみましょう。

毎日作るラーメンのスープの品質を一定に保つことを目的として、どれだけ出汁が出ているか測定するためにBrixメーターを使用することができます。

Brixメーターを使用して分析したところ、得られた数値が「20」だった場合、このスープは別に甘いわけではありませんが、「スクロース(ショ糖)」と同じぐらいの光の屈折率になるまで食材からエキスが抽出されたことを示しているわけですね。

③糖度(Brix)の分析方法

分析方法は大きく分けて二種類があります。「アナログ式」と「デジタル式」です。どちらも光の屈折率をもとに数値を算出しているので、本質的には同じ数値が出るはずですが、それぞれメリットデメリットがあるので解説していきます。

アナログタイプ

アナログタイプは「安い」のがメリットです。以下の通り2~3000円レベルで手に入りますので、気軽に入手することができます。

以下のような形をしていますので、プリズムカバーをあけてプリズム面にサンプルを滴下し、接眼レンズから覗き見ます。

すると、以下のように「白」と「青」の境界が見えますので、その境界面の数値を読み取って「Brix」を読み取ります。

見ての通り、メモリが細かくて人が肉眼で読み取るのでわりと難しい一面もあります。また、サンプルが均一な水溶液であれば分析の精度は高いですが、具がはいってたり均一ではない場合境界がぼやけて見えにくくなることもあるのが欠点になります。

まずは安い糖度計で試してみたいという方は以下をお勧めするので、参考にしてください。


デジタルタイプ

糖度計の一番のおすすめは「デジタル糖度計」になります。デジタル糖度計のメリットは「誰が分析しても同じ数値が出てくる」ということです。

アナログ式は人が数値を読み取る必要があり、同じサンプルでも人によって読み値が異なることもあります。

また、境界がぼやけてしまっているような場合、アナログ式は読み取りが困難ですが、デジタルの場合は一定の数値を示してくれるので、「人によるブレ」が極めて少なくなるのが特徴です。

ある程度予算がある方はデジタル式を推奨しますので、参考にしてください。


飲食店での使用シーン

ドリンクの作成
フルーツジュースやカクテル、シロップを使用するドリンクメニューでは、糖度計を使って適切な甘さを確認できます。これにより、毎回同じ味のドリンクを提供することができます。

デザートの作成
スイーツやデザートを作る際に、フルーツやジャム、クリームなどの甘さを正確に測ることができます。糖度を一定に保つことで、ケーキやパフェの味が安定し、顧客の期待を裏切りません。

仕込みや仕入れの管理
レストランやカフェでは、新鮮な果物や食材を使うことが求められます。仕入れたフルーツの糖度を測定し、熟成させる工程において、最もおいしいタイミングで提供するための判断材料にできます。例えば、甘さが十分なフルーツだけを使うことで、料理やドリンクの質を向上させることができます。

調味料の管理
ソースなどの調味料において、糖度を調整することで、料理の味付けのバランスを取ることができます。特に高級レストランなどでは、細かい味の調整が重要であり、糖度計が役立ちます。

出汁の抽出の管理
上述した通りあらゆる出汁の抽出の工程において、どれだけの濃度が抽出する参考になります。抽出しすぎた場合は薄め、抽出が足りない場合は追加で煮込んだり、濃いものと混ぜたりすることで一定の品質を維持することができます。

食品工場での使用シーン

果汁やエキスを濃縮する際の管理
たとえばフルーツを煮詰めてジャムにする場合、出汁を煮詰めてエキスにする場合、等、どこまで煮詰めて一定の品質のものにするのか管理する指標になります。

濃縮エキスの還元倍率の管理
上述したような濃縮した製品を水戻しする場合の倍率を決める上での参考になります。たとえば、100%のリンゴジュースを濃縮エキスから還元する場合にどれだけの水を添加するのか計算をします。

原料が正しい重量で配合されていることを確認する指標
調味料などのカテゴリーにおいて、原料が正しく配合されているか確認する指標として利用します。たとえば、正しく配合されていれば「糖度管理値:20±2」の中で正規分布することを確認して規格を設けていて、ある日15などの数値が出た場合、原料の入れ忘れ等があることに気付くことができます。

まとめ

いかがだったでしょうか。

「糖度計」と聞くと「糖分」しか測定できないようなイメージがありますが、実際には「光の屈折率」を利用してサンプルを分析する手法で、あらゆる食品を分析してその食品の状態を数値化することができる便利な手法です。

糖度計は食品にまつわる様々なシーンで活躍することができますので、食品事業に関係する皆様は品質を一定に保つために利用してみてはいかがでしょうか。

また、何か分析関係で気になることがあれば解説していきたいと思いますので、リクエストしていただければ幸いです。

本日は以上です。

さようなら!

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