【分析・評価】塩分の分析方法について

分析・評価

おはようございます!シータケ@食品工場です。

食品工場で商品を製造する上で、「塩分」は非常に重要な管理値であることが多いです。

なぜならば、原料が正しい重量で配合されていることを何かしらの分析で保証する必要があるなかで、塩分分析はその手法が一般的に確立されており、簡易的な分析機器も市販されているからです。

そこで今回は食品工場で容易に実践出来る2種類の塩分分析の方法についてお伝えしていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

では早速ですが、説明していきます。

①デジタル塩分計による分析

分析のメカニズム

このデジタル塩分系は、塩分が水に溶けるとその水溶液は「電気を流しやすくなる」ことを利用しています。すなわち「塩分の濃度」と「電流の流れやすさ(導電率)」に相関があることを利用して簡易的な分析を可能にしています。

以下の溝にサンプルを滴下して分析するわけですが、二つの丸が+と-の電極の役割をしており、サンプルへの電気の流れやすさ(導電率)を測定しています。

メリット

メリットは以下の通りです。

・コストがかからない(分析機が安い)
・分析の操作が容易(誰でも簡単にできる)
・試薬を使わないので加工場でも容易に分析できる

一方でデメリットもあります。

デメリット

・食塩以外のミネラル分が入っていると分析値が高く出ることがある(塩の他に導電率を上げる成分が入っているから)
・食品に油が含まれていると分析の精度が悪くなることがある(油に電気は流れないため)
・分析器によっては測定出来る濃度の範囲が決まっているため、サンプルを希釈しなければならない(例:0~10%の範囲が分析対象、等)
・公定法(※)ではないこと。

(※)公定法(こうていほう)とは分析の分野において国際機関、国家若しくはそれに準ずる公定試験機関、研究所において指定された方法をいう。社外に提出するデータとしては公定法で測定した数値を公表することが一般的です。

おすすめの使用場面

以上のことから、工程管理の一環として加工場で使用することを推奨します。

たとえば、仕込みの単位ごとに配合が間違いなく出来ていることを毎回確認する分には、製造効率も下げることなく簡便・迅速にデータを測定することができるため、非常に有効な分析方法だと考えられます。

正しく配合出来ていることを前提に分析データを収集し、3σ管理で管理幅を設定し、「異常」と「正常」がわかるような管理値を設定しましょう。

おすすめのデジタル塩分計

私が推奨するデジタル塩分系をいくつか紹介していきたいと思います。

①アタゴ デジタル塩分計 ES-421

デジタル塩分計の中では最高スペック。これを買っておけば間違いなし。
測定部にサンプルを滴下してボタンを押すだけ。

型式 ES-421
Cat.No. 4211
検出方式 電気電導度式
測定範囲 食塩濃度 : 0.00~10.0%
分解能 0.00~2.99%まで…0.01%
3.0~10.0%まで…0.1%
測定精度 ±0.05% (0.00~0.99%)
1.00~10.0%は相対精度±5%
電源 006P乾電池(9V)
寸法・重量 17×9×4cm, 220g(本体のみ)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

アタゴ ES-421 デジタル塩分計 ATAGO
価格:104,250円(税込、送料無料) (2024/10/4時点)


➁EISHIN(エイシン)デジタル塩分濃度計(EB-158P)【塩分計】

分析精度、分析範囲もそこそこ良く、コストパフォーマンスに優れるモデル。
サンプルにセンサーを浸してボタンを押すだけ。

名   称  塩分濃度計
 形   式  EB-158P
 測定方式  電導度測定方式
 表   示  7セグメントLCD/2ケタ表示
 測定範囲  0.0~5.0%
 測定精度  ±0.1%(濃度0.0~2.0%の常温液体)
 測定環境  液温:0~80℃ 室温:10~40℃
 電源電圧  DC3V(リチウム電池CR1616×1個)
         ※本体にセットされている電池はテスト用です
 電池寿命  約1800回(1日5回使用で約1年)
 外形寸法  158mm×30mm×14mm
 重   量  約25g(電池を含む)
 耐熱温度  100℃(センサープローブ部)
 材   質  本体:ABS樹脂
         センサープローブ部:ABS樹脂
         センサー部:真鍮に金メッキ処理


③ DRETEC EN-901WT ホワイト 

非常に安いものの、測定範囲、精度ともに低く使用範囲や目的が極めて限定されるモデル。
サンプルにセンサーを浸してボタンを押すだけ。

* 測定方法:電導度測定方式
* 表示方法:2桁デジタル
* 測定範囲:0.3~1.5%
* 測定精度
・5~45℃(被測定物温度)±0.2%
・その他上記範囲外では±0.4%
※その他の範囲は目安としてください。
* 動作温湿度範囲
・0~40℃
・85%RH以下(ただし結露しないこと)
* オートパワーオフ:約1分
* 使用電池:リチウム電池CR2032×1個
* 電池寿命:約1年(1日15回使用)
* 被測定物温度:0~90℃
* 外形寸法:約縦190×横27×厚さ14mm
* 重量:約27g(電池重量を含む)
* 検針部耐熱温度:100℃

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DRETEC EN-901WT ホワイト [デジタル塩分計]
価格:2,380円(税込、送料無料) (2024/10/4時点)


➁モール法による分析

分析の手順

①サンプルを容器に5mlはかる
➁水で希釈する
③指示薬として2%クロム酸カリウム水溶液を1ml加える
④0.02mol/L 硝酸銀水溶液で滴定する
⑤滴定量は0.01mlまで記録する
⑥以下の計算方法で塩分を算出する

詳細はこちらを参照してください。(独立行政法人 農林水産消費安全技術センター リンク

分析のメカニズム

モール法は銀(Ag)の沈殿反応を利用した分析方法の1つで、溶液中の塩化物イオン(Cl)の濃度を測定して塩分の濃度に換算することができます。溶液中のClがすべて食塩NaCl由来であると過程して、食塩濃度を計算することになります。

モール法では、主に次の2つの反応を利用します。

① Ag+ + Cl → AgCl  (白色沈殿)
② 2Ag+ + CrO42- → Ag2CrO4  (赤褐色沈殿)

①は、銀(I)イオンAg+とClが結合し、塩化銀(I)AgClの白色沈殿をつくる反応を表しています。

②は、Ag+とクロム酸イオンCrO42-が結合し、クロム酸銀(I)Ag2CrO4の赤褐色沈殿をつくる反応を表しています。

①の反応が優先して進みますので、➁の反応が起きて色調が赤褐色になったところを終点として判断することになります。

メリット

・公定法であること
・溶液中の塩化物イオン(Cl)の濃度を測定することから、デジタル塩分計よりも塩分の正確な濃度を測定できる

デメリット

・滴定の終点を見極めるのに力量が必要であること(訓練して力量があることを認定する必要がある)
・滴定をするので製造の間に分析をするには時間がかかってしまうこと(製造効率を下げる)
・滴定をするのに器具備品、試薬が必要であり、コストと手間がかかること
・硝酸銀自体は劇物に指定されることから、フードディフェンス上加工場に持ち込むべきではないこと

おすすめの使用場面

以下のようなケースの場合、たとえば品質保証課など加工場とは物理的に離れた薬品の管理ができる環境下で使用を推奨します。

・公定法による分析証明を提出する場合
・食品法令に定められた栄養成分の表示を作成する場合
・より精度の高い分析が必要とされる場合、等

必要な器具

試薬

2%クロム酸カリウム水溶液、および硝酸銀水溶液を作成しましょう。試薬の調整方法はこちらのリンク先にのっているので、ご確認ください。(独立行政法人 農林水産消費安全技術センター リンク

試薬調整の際にはメスシリンダーや電子天秤を使用しますので、こちらを参考にしてください。メスシリンダーは食品工場なのでガラス製のものは避けて、割れた時に飛散しにくいプラスチック製のものを使用しましょう。


電子天秤は小数点以下2位まで測定できるスペックのものを使用しましょう。

大手のエー・アンド・デイのEK-410iがお勧めです。以下のようなスペックで、最大400gまでを0.01g刻みで測定することができます。試薬を正確な濃度で作成するためにはこの程度のスペックが必要になります。


標準分銅

食品工場で使用する電子天秤は壊れていないことを定期的に確認する必要がありますので、以下のような標準分銅を用意して毎日、電子天秤で測定して動作確認しましょう。測定時には中央と四隅の5点で確認することを推奨します。


デジタルビュレット

滴定する際にはデジタルビュレットを使用することを推奨します。ガラス製のビュレットでも問題ありませんが、万が一割れた時に食品工場では大きな問題になりかねません。

デジタルビュレットは以下のタイトレットが最大手で精度も高く推奨されますが、私は最近VITLABのものも購入して使用してみましたが、そちらも問題なく使用できました。


以下がタイトレットの仕様です。精度が高いことが特徴的です。一方で、滴定するためには50mlのシリンダーに試薬を補充しなければならず、シリンダーが空になったらその都度補充する手間が面倒です…。

こちらがVITLABのデジタルビュレットになります。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

VITLAB デジタルビュレット コンティニアスE
価格:156,750円(税込、送料別) (2024/10/5時点)


以下がVITLABのスペックです。精度がタイトレットに劣るものの、シリンダーに自動で試薬が補充されるため、とても使いやすいことが特徴です。構造上、滴定している最中につまみが固くなることがありますが、精度には影響がないので気にする必要はありません。

ガラス製ビュレット

どうしても予算が限られている方は以下のガラス製のビュレットを使用しましょう。割れないようによく管理することが必要になります。

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ビュレット PTFEコック付 50mL
価格:5,602円(税込、送料別) (2024/10/5時点)


まとめ

いかがだったでしょうか。

一言に塩分の分析といっても様々な分析方法、分析器具があり、実際に塩分分析をしようと思っても躊躇してしまうのではないでしょうか?

今回は上記の通り私が工場で実際に使用している器具をご紹介させていただきましたので、皆様が使う際に参考になれば幸いです。

何かご不明な点があればぜひメッセージをください。

本日は以上です。

さようなら!!

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