おはようございます!シータケ@食品工場です。
今日は「ニュース解説」ということで、消費者庁のホームページに投稿されていた表題の件について解説していきます。
この事故は「凍結用の冷媒に使用しているブライン(塩化カルシウム水溶液:食品添加物)が混入している可能性があるため」となっております。
この事故がどれぐらいやばいのか!?みなさんわからないですよね。
工場の最前線で仕事をしている立場から事情を解説させていただきますので、食品安全について理解を深めていただければ幸いです。
対象の商品
セイカ食品の「しぐれ」という氷菓です。かき氷みたいなアイスだと思います。
どこかにロット番号があると思いますが、冷凍食品は「賞味期限」が無いものもあるため、一般の消費者の方がロットを把握するのは難しいですね。
詳細は消費者庁のリコールのサイトを参照してください。
回収の理由
「凍結用の冷媒に使用しているブライン(塩化カルシウム水溶液)が混入している可能性があるため」ということになっています。つまり、本来食べることを目的としていない工業的な液体が食品に混入した、ということです。
今回は少し難しいかもしれませんので、もう少し詳しく解説していきます。
冷却の設備の仕組み
下の図をご覧ください。
これは一例になりますが、水など何か液体を冷やすときの設備です。
(「KOOSマシナリー株式会社のアイスウォーターチラーシステム」)
低温チラーユニットを使用してキンキンに冷やした「不凍液(ブライン)」を通じて、常温の水を冷やしていくわけです。このとき、不凍液(ブライン)で常温の水を冷やすために「熱交換器」という設備を使います。
熱交換器は薄いステンレスの板で隔てた空間をそれぞれキンキンに冷えた「不凍液(ブライン)」と常温の「水」を通すことで、熱を交換して水をキンキンにひやしているのです。
なぜブラインが混入するのか
なぜブラインが混入するのか、考えられる理由は二つあります。
①設備の老朽化でピンホールがあいた
熱交換を隔てているステンレスの板が老朽化すると「ピンホール」があくことがあります。ようは小さな穴です。これが空くと、中身がつながりますので、ブラインが水側に流れ出てしまいます。
➁設備の組付け不良
設備が壊れてなくても人がメンテナンスなどで設備をバラバラにして、再度組み付けるときなどに失敗するとブラインが混入してしまうこともあります。
過去の事故
類似した食品の事故に「カネミ油症」があります。
こちらは油を加熱する工程(脱臭工程)で熱媒体(当時はPCBという有害な物質)を使用しており、これが油側に漏れ出てしまった事故です。
油を通して摂取した人々は顔面などへの色素沈着など肌の以上、頭痛、手足のしびれ、肝機能障害などを引き起こしました。
また、この油を喫食して妊娠していた女性患者から全身が真っ黒の胎児が産まれ、2週間ほどで死亡するという事件が発生したことも有名な話です。
(東京都保険医療局のサイトより リンク)
リスクは何か
今回の事故に関しては「健康危害は無い」と推察します。
理由は熱媒体が「食品添加物グレードの塩化カルシウム」であるからです。
これまでのカネミ油症を筆頭とした食品事故を踏まえて、人々が喫食する食品に用いる「熱媒体」は最悪の場合、漏れて混入することを前提として人体に無害なものを使用しています。
今回の塩化カルシウムも人体には無害であり、毒ではありませんので多少口に入ったところで健康被害に至ることはありません。
まとめ
以上のことから、今回の回収事故は、幸いにして特に健康危害はありませんので、その点において心配はいりません。
ただ、熱媒体が製品側に漏れ出てしまうような管理体制の甘さが露呈した事件だったかなと思います。
このトラブルを教訓に、対策を立てていただいて今後の事故を防いでいただきたいですね。
今日は以上です!!
さよならー!
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